



公衆電話に並ぶ

1995年前後、当時、まだ今のように携帯電話が普及しておらず、
ビジネス利用している大人だけが持っているステイタスのようなものでした。
利用料金も今よりもずっと高いのに、アンテナを伸ばさなければ
電波が届かないといった使い勝手の悪いものでもありました。
そんな中、女子高生を筆頭に「月額料金が定額制である」ことが
魅力的なポケベル(ポケットベル)が流行りだします。
彼女たちの中には、PHSなるものを持っていた人もいますが、
多くが公衆電話を使ってメッセージを送っていました。
なので、学校の最寄駅や、学校内の公衆電話は常に長蛇の列!
たった10数文字のメッセージを送るために、
毎回最低でも10円使うことになっていたのですから、
なかなか不経済なものでした。
テレホンカードが手放せない
いちいちポケベルを打つのに、小銭を入れていようものなら、
10円玉を何枚持っていても足りなくなってしまったので、
必然的に、テレホンカードが主流となります。
当時、イラン人が街ナカで「偽造テレホンカード」を
安く売っているといった噂が流れるほど、
テレホンカード(通称:テレカ)を誰もが持っていたものです。
50度で500円・100度で1000円といった料金設定があり、
最大で540度テレホンカードなるものまで存在していました。
一回一回テレカを入れてベルを打ち、
そしてまた入れては打ちの繰り返しによって、
みるみるうちに度数が減り、カードの穴が増えていった記憶は、
多感な思春期に公衆電話のヘビーユーザーだった人にとっては、
随分と懐かしいのではないでしょうか。
高速打ちで大人をビビらせる

授業の合間や電車に乗る直前、
何せ早く打たなければ1回メッセージを送るのに、
10円では収まらなくなる可能性があったのがポケベルです。
また、不便なことに、毎回メッセージ1回打ったら、「#」を押して、
ガイダンスで「メッセージをお預かりしました。ご利用ありがとうございました」
なるメッセージが流れる仕組みになっているのですが、
「メッセージを」のあたりで、受話器をガチャリと置く人がほとんどでした。
あの子にも、この子にも、そして彼氏にも、
メッセージを送る相手が多ければ多いほど、
また相手からの返信があればあるほど、ハイスピードで文字を打たなければ、
休み時間などでは間に合わなかったのです。
今でも、パソコンのタイピングで「カチャカチャカチャ」と
激しくキーボードを叩く人がいますが、当時の女子高生は
公衆電話のボタンが潰れるのではないかというくらいに押しに押しまくっていたのでした。
ベル番なるものを記憶している&ベル番で手紙を書く

ポケベルは時間との戦い。だからこそ、高速送信するためには、
ベル番を覚えておく必要がありました。
ベル番とは、ポケットベルでメッセージを送るとき、
変換される文字に当てられた数字のことです。
たとえば、11は「あ」、12は「い」というふうに、
あいうえお順に数字が割り当てられていました。
その法則を使えば、たとえば、「11 12 41 12」であれば、
「会 い た い」となります。
そこで、この裏ワザを使って、先生に内容がバレることなく、
授業中にメモを回したり、手紙を書くことができ、利用する人が跡を絶ちませんでした。
文字化けや文字数オーバーを推測して解読する技術力
とはいえ、数字の列を超高速で入力するものなので、
たまに打ち間違いや入力ミスが起こります。
すると、1文字ずつズレて変換されてしまい、ポケベルには、
ワケのわからないいわゆる「文字化け」したメッセージが届きます。
そんなときは、前後の数字から推測して、
一体本当は何というメッセージだったのかを解析する猛者までいたものです。
また、メッセージの最後には「あだ名」や「名前」を入れておくることが
通常でしたので、そこから推測して、あとで本人に確認してみることもできました。
つまり、ポケベルは送信元が表示されないので、
名前を入れ忘れてしまうと、誰から届いたメッセージか分からないのです。
そして、誰でもベル番を適当に打って、つながれば、
知らない人にもメッセージを送ることができました。
そのことから、ベル友を作ることもトレンドとなっていくのです。
詳しくは次章にて。
「ベル番教えて」の横行&やたらベル友を作りたがる

好みのタイプの異性や合コンなどで知り合った人と気軽に
「ベル番」を交換することがありました。
そのために、ポケベルの販売元は「ベル番配布用カード」
なるものまで用意していたくらいです。
もちろん、前述したとおり、ありそうな番号に
「ベル友にならない?」等とメッセージを送って、
返信を待つ人も多かったようです。
それをきっかけに付き合い出す男女もいたというのですから、
まさしくSNSのさきがけだったと言えますよね。
また、スマホや携帯電話のように番号だけを変えることはできなかったので、
困ったトラブルに巻き込まれた人は度々新しいポケベルを買い直すことになりました。
人気機種だと予約しなければ手に入らなかったり、
学生が手軽に購入できるような金額ではなかったので、
普段から大切に扱い、付属のキーチェーンでしっかりと
制服のポケットに留めている人が多かったことを記憶しています。
「ポケベルが鳴らなくて」という歌がヒットしていた
1993年、緒形拳さんと裕木奈江さんが主演の
「ポケベルが鳴らなくて」というドラマが社会現象にもなりました。
その内容は、父が娘の友達と不倫関係に陥ってしまうという
大変ショッキングでセンセーショナルなものでしたが、
2人が秘密の恋を続けるために使っていたのが、まさに「ポケベル」だったのです。
今も昔も、文明の利器を巧みに操り、良からぬことに使う人っているのですねえ。
まとめ

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